日本の金工とウェディングジュエリー
日本の装身具
日本人は手先が器用、というのは国際的にも共通の概念ではないかと思います。
地域に根差した特産品も多く、金工・木工・染色・陶芸・織物・人形作り・ガラス細工など、専門の腕の良い職人が今も多数活躍しています。
私たちAIMの制作するジュエリーという分野について取り上げると、もともと日本にあった工芸の技術・素材を外国から輸入された宝飾品の知識に融合させることで、日本独自の発展を遂げました。
今や日本のジュエリーの数々は、諸外国に勝るとも劣らない技術を誇っています。
元来日本の装身具は、素材としての金属や宝石の希少価値ではなく、その加工技術の高さによる価値を競ったものが多く存在していました。
刀剣の鍔(つば)の装飾や香合、帯留め、かんざしなどには日本独自の金属加工の技術が伺えます。
AIMでは使用しない金属もありますが、この章では独特な雰囲気をもつ金属工芸の魅力と、AIMで制作しているウェディングジュエリーのシリーズについてお伝えしたいと思います。
伝統工芸にみられる金属
金工の技法は、主に以下のようなものがあります。
・鋳金
型を作り金属を流し込んで成形する技法
・鍛金
日本刀のように金属そのものの形を叩いて変化させたり、板状の金属を様々な形状の鏨を用いて立体的に仕上げる技法
・彫金
金属の表面に鏨で模様を彫ったり、立体に作りこんでいく技法、また、種類の異なる金属をはめ込む象嵌など
こうしてみると、ジュエリーは日本の金工技術と切り離して語ることができないものだとわかります。
鋳金はロストワックスを使用した石膏型、鍛金はリングなどを叩いて作ることもあります(金属の種類にもよりますが、叩くとよく締って丈夫になります)し、彫金の道具は石を留める際にも、細かい模様をつける際にも使用します。
耳慣れない素材ではありますが、伝統工芸における金工の分野で使用される金属の特徴的なものに、四分一(しぶいち)というものがあります。
これは銅と銀の合金で、銀の比率が1/4にされていることにちなんだ名称です。
その仕上がりはわびさびを感じさせる渋い銀色で、プラチナの水のような透明性を感じる色味とも、シルバーアクセサリーに見られる艶の引き立つ若々しい色味とも異なる、落ち着いた美しさを放ちます。
そもそも金属は、純粋で混ざりけのない状態だと柔らかすぎて形がすぐに変わってしまったり、傷がついたりと装身具には不向きです。
シルバーアクセサリーに「SV925」、ゴールドの製品に「K18」などという刻印がさせているのをご覧になったことがあるでしょうか。
これは全体の金属にどのくらい表記の金属が使用されているかを表すもので、完成したジュエリーに刻印を打つかどうかは制作者側のポリシーにゆだねられてはいるものの、刻印があることによるブランド・メーカーの信頼度上昇やリジュエリーの際の消費者・業者間の取引の簡略化のためにも現代では必須の工程です。
SV925は1000分率で表されており、925/1000が純粋なシルバー、K18 は24分率での表記で、75%が金という風に読みます。
なお、海外の製品には750という表記がされている場合がありますが、日本と異なる1000分率の表記であるだけで、配合は同じです。
伝統技法で使用される金属にはほかに、銅と金を混ぜた赤銅(しゃくどう)、銅に錫を混ぜた青銅(せいどう、10円玉の素材です)などがあり、その色味や質感の幅広さによって用途も多岐に渡ります。
伝統工芸とジュエリー
現代において、金属加工の観点から見た伝統工芸とジュエリーの領域が交わる部分はごくわずかです。
新たな技法が開発され伝統工芸の作り方でなくても要望に答えられるようになったことに加えて、前項でお伝えした日本独自の金属の美意識と一番相性が良いのが着物文化であるため、和洋の装いをどちらも尊重する現代をみてもわかるように、枝分かれして進化していったのではなく伝統工芸が舶来技術である宝飾品加工を後押しする形で今もそれぞれの領域が存在しているのではないかと考えられます。
日本独自の文化と外国からの文化が共存している部分は普段の暮らしにも数多く、お祭りやお正月のような伝統行事がありながら、クリスマスや教会での結婚式などを楽しむことができるのは日本ならではです。
染めや刺繍の技術だけでなく、色使いやデザインそのもののジャンルまで幅広く、季節・場所・シチュエーションなどの暗黙のルールが多いのも着物の面白さと難しさを感じる特徴ですが、装身具に関しては洋装のときよりアイテムが少なくなります。
博物館や美術館でのジュエリー展示で、ティアラなどとともに並べられるのは「parure (パリュール)」とよばれるジュエリーのセットです。
ネックレス、イヤリング、ティアラ、ブローチなどひと揃えが箱に収められていて、どんなドレスだったのかという想像が掻き立てられるアイテムです。
日本で洋装が一般的になり始めた時代、同様にアイテムとしてのジュエリーやその加工技術が海外からもたらされ、需要とともに発展していったのではないかと考えられます。
結婚式で身に着けるジュエリー ― ティアラ・ヘッドジュエリー
昨今、ご婚礼などの和の装いの際の髪型についてはとても自由度が高く、洋風なスタイルのままお色直しをされる方も多いようです。
ネックレスや耳飾りが着物には不向きな代わりに、帯留めやかんざしで和装ならではの装いが可能になります。和装のときは鼈甲や真珠を使ったかんざしを、洋装なら輝きの映える素材のもの、と変化をつける方もいらっしゃるようです。
AIMでもレンタルのティアラやヘッドジュエリーを扱っています。
どのデザインも洋装・和装どちらにも似合うようなオリエンタルな雰囲気で、先端の細い鏨で花芯に彫りを施したマーガレットのティアラ[plaisir プレジール]や、優雅に花園を飛ぶ蝶のティアラ、瑞々しい紫陽花のヘッドジュエリーなど、テーマ性も高くデザインが華やかなのが特徴です。
ネックレスやイヤリングなどがセットでつけられるシリーズもご用意しています。
お色直しに合わせて数点、イヤリングのみ・ネックレスのみのレンタルでも承ります。
ウェディングドレスを手作りされた方や、他にはないこだわりのイメージのジュエリーをお探しの方にお勧めしたいウェディングジュエリーの数々です。
挙式でご着用のジュエリーが今日までの日本の金工技術を駆使して作られているという事実も、きっと素敵な思い出をより味わい深いものにしてくれるのではないかと思います。
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