ティアラ[HANA AKARI]vol.1
ティアラのオーダーメイド
今回の記事では、オーダーを受けたティアラにまつわるお話を2回に分けて記載いたします。
普段あまり目にする機会がないティアラというジュエリーがどのようにつくられるのか、さらにひとつひとつのパーツがそれぞれジュエリーとしても完成度の高いデザインになるまでの長い道のりについてご紹介して参ります。
AIMとして職人と仕事を始めてから、何点か制作したオリジナルのティアラはどれもとても思い入れの強い作品です。
ティアラは見せる「場面」が大きいので、どのように作っていくか綿密に打合せをしてから制作に入ります。
フレーム作りから構成するパーツのロウ付けの順序、石の留め方、磨き方など、重なって磨けない箇所がないか、石が留めにくい箇所はないか、デザインの段階でも必要な検討です。
石留めは最後の工程に近いので、大きなフレームごと固定できる道具を組み立てたりもしました。
そんなティアラはいつも、アトリエの入り口付近のショーケースに、アトリエに入ったことのない方でもご覧になれるところにシリーズで陳列していました。
あるときティアラが制作できる職人を長年探していた方にご縁があり、デザイン提案からお任せいただける機会を頂きました。
といっても今まで制作してきたティアラ着用の主なシチュエーションであるご婚礼ではなく、寺院の儀式でご使用になるとのこと。
数々の資料をお持ちになったクライアントとの最初の打合せが終わった後、大変重要な仕事を頂いてしまったと、興奮して職人に伝えたことをよく覚えています。
儀式で使われる装身具
日本の宗教の儀式と宝飾の関係性は、海外のそれに比べて少し縁遠いように思います。
我が国の文化として大切に培われてきた素材である木や紙、金属なら真鍮などにその大きな役割を委ね、金銀の使用された歴史はあまり耳にしません。
季節の移り変わりによる植物や虫の変化から、儚さの中に見出す美意識や、わびさびの思想がきらびやかなものとの距離を保っていたのではないか、と私は考えています。
花の散る姿は何とも物悲しいものですが、満開の桜が暖かな春の風に舞う花吹雪の美しさには、日本人なら誰もが心を動かされるのではないでしょうか。
板橋区の南蔵院は、そうした季節の移ろいの美しさを愛でることのできる寺院です。
HANA AKARI [花明かり]のティアラを制作するにあたって、私自身が特に仏教に関心を抱いていたわけではありませんでしたが、多くの過去の仏像や真言宗という類まれな文化を覗き見ることで、デザインに多くのヒントをもらいました。
紅葉の季節も素敵ですが、春の桜は本当に見事です。
vol.2ではティアラの制作工程について詳しくご紹介いたします。
南蔵院〜板橋区本蓮沼にあるこころ安らぐ桜寺〜|寳勝山南蔵院公式ホームページ| (nanzoin.jp)
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